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裁判例:原付バイクの無償貸与の責任

 

大阪地方裁判所判決令和元年7月30日判決

原付バイクを無償で貸したことで、運行供用者責任を追及された事件です。

大阪地方裁判所判決令和元年7月30日判決です。

返還要求はしていたものの、その程度は強くなかったとして、運行供用者責任が肯定され、2000万円以上の損害賠償義務を負うことになってしまいました。

この事例は、

  • 原付バイク、車を貸している
  • 原付バイク、車の無断使用を黙認している

 

ような人に役立つ内容です。

 

 

事案の概要

原告X1が運転する自転車と被告Y1が運転する原動機付自転車との間で、交通事故が発生。

平成27年10月6日 午前11時29分頃の事故でした。原告自転車と被告原付とが、出合い頭に衝突。


原告X1が、被告らに対し、本件事故により人的損害を受けたとして、被告Y1に対しては民法709条により、被告Y2に対しては自動車損害賠償保障法3条本文により、連帯して、損害賠償請求をしたものです。

 

第2事件は、人身傷害保険の付帯した自動車保険契約を締結していた保険会社が、同契約に基づき、本件事故により原告に生じた人的損害につき、保険金を支払ったことにより、損害賠償請求権を代位により取得したと主張して、保険金支払分の金額等を請求した事件です。

 

交通事故判例

 

事故現場の状況

本件事故現場は、ほぼ南北に延びる道路とほぼ東西に延びる道が交差する、信号機による交通整理のされていない交差点。

被告側通路の本件交差点から東側の部分は、路側帯と車道からなる道路であり、本件交差点と接する部分において一時停止規制がされています。


原告X1は、原告側道路を北進し、被告Y1は、被告側通路を東進し、衝突。当事者双方の進行方向から相手方の進行方向への見とおしは、いずれも悪い状況。

 

原告の交通事故での傷害

原告X1は、本件事故により、顔面挫創、左眼窩骨折、左側上顎中切歯歯牙破折、右尺骨茎状突起骨折、右示指DIP・右中指PIP関節内骨折、左中指・環指・小指PIP関節脱臼、右母趾骨折、右橈骨遠位端骨折の傷害を受けました。

入院が、合計18日間、通院も含めた治療期間は、588日でした。

実通院日数は43日。

 

原告の交通事故での後遺障害

右中指PIP関節内骨折、右示指DIP関節内骨折、左中・環小指PIP脱臼骨折、右尺骨茎状突起骨折、右第1足趾末節骨骨折について、平成28年3月22日症状固定。

顔面と左腰部の瘢痕について、平成29年5月15日症状固定。当時の年齢は52歳。


原告保険会社は、原告X1の本件事故による後遺障害について、自動車損害賠償責任保険への事前認定の結果を踏まえて、併合第9級に該当すると判断。

左中・環・小指PIP脱臼骨折後の左中指、左環指、左小指の欠損・機能障害
「1手のおや指以外の2の手指の用を廃したもの」に該当
自動車損害賠償保障法施行令別表第二の第10級7号
なお、左手の痛み、力が入りにくい、社会生活において支障がある、こわばり感がある等の症状及び左中指、左環指の指骨の一部欠損については上記等級に含めての評価。


右示指DIP関節内脱臼骨折、右中指PIP関節内骨折、右尺骨茎状突起骨折後の右手の痛み、力が入りにくい、社会生活において支障がある、こわばり感がある等の症状
「局部に神経症状を残すもの」に該当
第14級9号

顔面部の傷痕
「外貌に醜状を残すもの」に該当
第12級14号

これらを併合第9級と判断したものでした。


事故態様と過失相殺

裁判所は、被告Y1について、被告側通路の本件道路から西側の部分に車止めがあるなどの事情から、原告側道路を走行する車両等にとって、車両の通行を想定することが困難な道路から本件交差点に進入しようとしていたものであり、本件交差点進入前に、原告側道路の交通の安全を十分に確認して、適確にハンドルやブレーキを操作して被告原付を進行させる義務があったのに、これを怠り、漫然と相当程度の速度で被告原付を本件交差点に進入させた結果、被告原付を原告自転車に衝突させ、原告自転車の前輪を右に大きく変形させ、原告を転倒させたと認定。

一方、原告X1には、被告原付の進入を認識も予見もしていなかったと認められるが、見通しが悪い本件交差点において、車止めがあるような被告側通路の本件交差点から西側の部分より、相当程度の速度で原動機付自転車が走行してくることを認識又は予見することは困難と認定。

そうすると、原告X1には、過失相殺の対象となるような落ち度があるとは認められないとしました。


本件事故は、被告Y1の一方的な過失により生じたとし、過失相殺を否定しています。

 

無償で貸した経緯

被告Y2と被告Y1は、中学校の同級生。実家も近く。被告らの間には、何人かの共通の知人がおり、被告Y2の配偶者も同級生。

被告Y2は、その所有する被告原付を通学のために使用していたが、平成26年3月に高校を卒業。

被告Y2は、平成26年9月に出産をした後、特に被告原付を使用していませんでした。また、被告Y2は、被告原付以外に、車両を保有していませんでした。

被告Y1は、平成27年1月1日、被告Y1が使用していた単車を運転中に、四輪車と交通事故を起こし、損壊。
被告Y1は、平成27年1月12日の成人式で、被告Y2に会った際、被告原付をしばらく貸してほしいと頼みました。

そこで、被告Y2は、被告Y1に対し、同月16日、被告原付を無償で貸し渡しました(本件無償貸与)。本件無償貸与について、具体的な貸借期間はなし

被告Y1は、被告Y2から借りた被告原付を、通勤や日常の移動に利用。

被告Y2は、平成27年3月、被告Y1に対し、被告原付を返却するか、それができないのであれば買い取るように求めました。しかし、返却はできないと答えつつも、今すぐ買い取るとは答えませんでした。

その後、被告Y2は、LINEアプリや電話、共通の知人を通じての連絡や、たまたま会ったときに話をするなどして、被告原付のことを尋ねたが、被告Y1は、本件事故が発生するまで、返却することも買い取ることもせず。

 

本件無償貸与の開始から1年目である平成27年度の被告原付に係る諸税は、被告Y2が負担。

 

 

運行供用者責任として損害賠償義務を認める

本件事故当時、被告Y2は、被告原付の所有者であり、被告Y1は、被告Y2から被告原付を借り受けて使用していたという状況です。

一方、被告Y2は、本件無償貸与の後、平成27年3月以降、何度も被告Y1に被告原付の返却または買取りを求めていたところ、同年10月に本件事故が発生。

もっとも、本件無償貸与自体は、被告Y2と被告Y1との間で任意に行われたものであると認定。

また、被告Y2は、平成27年6月頃、第二子を妊娠中であり、流産の危険があったことから、十分に返却を求める行動がとれなかったとされており、また、共通の知人を介して返却を求めても、被告Y1は被告原付を返却しなかったとされています。しかし、被告Y1と被告Y2との関係からすれば、被告Y1に返却や買取りを求めるのに際して、被告Y2が現実に採った手段以上に強く返却や買取りを求めることができなかったとは認められないと指摘。

以上によれば、被告Y2は、本件事故当時、被告Y1による被告原付の運行を支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場を失っていなかったというべきであるとしました。

したがって、被告Y2は、運行供用者に該当するから、自賠法3条本文の責任を負うと結論づけました。

もっと強く求めなければならなかったという内容です。

 

交通事故による損害額

治療費費等(診断書料等を含む。) 58万4895円

入院雑費 2万7000円
通院交通費 1万2810円
眼鏡代 8万円
休業損害 414万3916円

後遺障害による逸失利益 1345万2480円
入通院慰謝料 188万2000円
後遺障害慰謝料 690万円
以上合計 2708万3101円
既払金 △1990万9469円
控除後 717万3632円
弁護士費用     71万円

認容元本額 788万3632円

 

保険会社については、本件保険契約に基づき、1990万9469円を支払い、同額について原告X1に代位し、その後、自賠責保険から703万6458円を回収したと認定。
1287万3011円について、求償請求を行うことができるとしています。

 

運行供用者責任が問題になる事例

運転者以外に、車両の名義人に対して責任追及されるのが自賠法の運行供用者責任です。

家族や従業員などが運転して事故を起こした場合に、名義人も責任を負うものです。

その運転状況を支配していたと評価され、責任も負わされる趣旨です。

 

この運行供用者責任が問題になる事例として、家族や従業員が承諾なく、無断で運転した場合や、窃盗犯が運転した場合、名義貸しなどがあります。

それらに加えて、本件のように車を貸した場合も問題とされます。

賃貸借や使用貸借の場合も、基本的には貸主が責任を負うことになります。

ただ、最高裁では、2時間後に返却すると言われたので無償で貸したところ、借主が1ヶ月以上も返還しなかったという事案で、借主側の欺く意思を認定、貸主の運行供用者責任を否定している判例があります。

貸し借りの場合には、返還期限の設定や、返還のためにした行動が判断要素になっています。

本件でも、そのような点が重視され、運行供用者責任が認められてしまっているといえるでしょう。

 

車両の貸し借りについては、くれぐれもご注意ください。

 

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