死亡事故と遺族の転居費用についての裁判例。神奈川県厚木市・横浜市の法律事務所

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裁判例:死亡事故と遺族の転居費用

 

名古屋地方裁判所令和元年5月29日判決です。

名古屋地方裁判所令和元年5月29日判決です。

複数の衝突により、被害者が死亡した事故。

特徴として、複数車両の運転手の責任、共同不法行為が問題になった点、損害のなかで遺族の転居費用を認めた点があります。

衝突という事故だけではなく、衝突後の運転も過失の態様として認定されています。

 

 

事案の概要

片側5車線の道路の第4車線を走行していた普通自動二輪車(原告車両)。

第5車線から第4車線に進路変更をした普通乗用自動車が被告車両。

これらが衝突し、転倒した二輪車運者の頭部が上記道路の第3車線を走行していた中型貨物自動車の右前輪に挟まれた後、同車両が上記道路の第1車線に停車するまで進路変更をしながら走行を続け、脳挫傷により死亡。

相続人らが原告となり訴え提起した事案です。

 

加害車両の過失

被告車両は、本件事故の前、本件交差点に近付いたところ、対面信号機が青色に変わったにもかかわらず、第5車線の先頭の車両は停車したままであり、前方を走行していた車両も減速したため、第4車線へ進路変更をしようと考え、左方向指示器を点灯させないまま、本件交差点の約25m手前の地点で進路変更を開始。


被害者は、ヘルメットを着用し、前照灯を点灯させた原告車両を運転し、本件道路の第4車線を走行し、本件交差点に近付いたところ、前方で進路変更を開始し、ほぼ進路変更を終了した被告車両の後部左角付近と衝突し、左側へ転倒したという事故内容でした。


被告車両が進路変更を開始してから原告車両と衝突するまでの時間は、約1.5秒。

これらに照らせば、被告車両が進路変更を開始する前に左サイドミラー等で左後方を十分に確認していれば、原告車両の存在を認識できたと認められるとしました。


したがって、被告車両には、第5車線から第4車線へ進路変更をするに当たり、あらかじめ左の方向指示器を点灯させ、左後方からの進行車両の有無及びその安全を十分に確認した上で進路変更をすべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠った過失があると認められるとして、過失を認定しました。


中型貨物自動車の責任

第3車線を走行していた中型貨物自動車の運転手等も被告に加えられています。

本件道路の第3車線を走行し、本件交差点の停止線付近に至ったところ、衝突により左側へ転倒した原告車両が中型貨物自動車車両の右側面に衝突。

被告車両と原告車両が衝突した際、中型貨物自動車は、被告車両とほぼ併走する状態でした。

そこで、上記衝突直後の中型貨物自動車と原告車両との衝突及び原告車両への乗り上げの点並びに車両の右前輪付近に被害者の頭部が挟まれた点については、予見し、回避することは不可能であったと認定しています。

これらについて、過失を認めることはできないとしています。

 

衝突後の過失を認定

原告らは、衝突地点から約41.5m先の地点(一旦停止しかかった地点)において、停車し、右側付近の安全を確認すべき注意義務があったにもかかわらず、同義務を怠り、上記地点から約23.1mもの距離を左右にハンドルを転把しながら走行した点に過失があると主張していました。

中型貨物自動車は、本件事故の際、その右側面を原告車両に衝突され、さらに、その右後輪で原告車両に乗り上げ、上下に揺れたものであると認定。また、中型貨物自動車に搭載されたドライブレコーダーには、原告車両との衝突及び乗り上げの際の「ゴッゴッ」という音や「ガシャッ」という音が記録されているほか、上記ドライブレコーダーから異常振動を感知したことを知らせる音声が流れたものであると指摘。


以上の各事実に照らせば、中型貨物自動車と原告車両との衝突及び乗り上げの直後において、中型貨物自動車は、本件事故の具体的な内容を認識することまでは困難であったとしても、中型貨物自動車車両に異常事態が発生したことを十分に認識することができたというべきであるとしました。

そして、道路上を走行中に発生する異常事態としてまず考えられることは交通事故であるところ、自動二輪車が関係する交通事故が発生する可能性は十分にあること、自動二輪車が関係する交通事故の場合、その乗員が道路上に転倒する可能性が十分にあること、その場合、同乗員が道路上を走行中の四輪車の下部等に巻き込まれる可能性も十分にあること、本件の場合、原告車両に乗り上げ、上下に揺れたものであること等を総合すれば、中型貨物自動車は、上記異常事態を認識した際、車両の下部等に人を巻き込んだ可能性があることを認識できたというべきであるとしました。


そうすると、そのまま走行を続ければ、その人の生命または身体の安全を害することは予見できるのであるから、遅くともほぼ停止状態となった地点において、停車し、周囲の安全を確認すべき注意義務があったと認められるとしました。

上記注意義務を怠り、上記地点から左右にハンドルを転把しながら中型貨物自動車を本件道路の第1車線まで走行させたのであるから、過失があると認められると結論づけています。

 

 


共同不法行為が成立する

まず、事故については、一連の出来事の原因となっていることから、被告らの不法行為には客観的な関連共同性が認められると認定。


そして、被害者は、被告車両との衝突後、貨物車両の右前輪に頭部を挟まれ、貨物車両が一旦停止しかけた時点で既に死亡を免れない傷害を負っていた可能性は否定できないけれども、原告の血液が貨物車両の停車場所である本件道路の第1車線上に集中的に貯留しており、ヘルメットもその付近に転がっていたこと、貨物車両は一旦停車しかけるまではほぼ真っすぐ走行していたのに対し、その後は左右にハンドルを転把しながら走行したものであること等に照らせば、貨物車両が一旦停止しかけた地点から再度走行を始めた後に死亡に至る重大な傷害を負った可能性も否定できないと指摘。


以上のとおりであるから、被告らの各不法行為につき、民法719条、1項後段の共同不法行為が成立し、被害者の死亡の結果を含む人的損害につき、連帯して損害賠償責任を負うものであるとしました。

ただし、原告車両は、専ら被告車両の不法行為により損傷したものと認められるから、物的損害については、共同不法行為を否定しています。

 

酒気帯び運転の過失相殺は5%

被害者は、本件事故の前日である平成27年8月14日午後9時頃から本件事故の当日である同月15日午前2時前頃までの間、断続的に飲酒をしたこと、本件事故当時の被害者の血中アルコール濃度は0.47mg/mlであったこと、同濃度は、一般的な方法で呼気中アルコール濃度に換算すると、0.235mg/lとなることが認められました。

本件事故当時、被害者は、酒気帯び状態であったと認められるのです。
他方で、酒酔い状態であったとまで認めるに足りる証拠はないとしています。

被告らは、本件道路の制限速度は時速60kmであるのに対し、本件事故直前の原告車両の速度は時速87km前後であったと主張し、この点からも過失相殺の主張をしました。しかし、証拠上、そこまでの速度は認められないとしています。

その結果、被害者の過失割合は、5%と認めるのが相当であるとしています。

 

死亡交通事故の損害

人身損害について、他の事故と同様の損害を認定しています。

治療関係費、眼鏡代、文書料、葬儀費用。

死亡慰謝料は2200万円。
本件事故の態様、被害者の年齢、家族の状況、妻と幼い長男を残してこの世を去ることとなった被害者の無念さ、その他本件に現れた一切の事情を考慮して認定。

その他に、固有慰謝料を各300万円としています。慰謝料トータルとしては2800万円であり、裁判基準の金額になっているといえます。

 

死亡交通事故と逸失利益

逸失利益として5845万5894円を認定。

本件事故当時、被害者は、株式会社に勤務しており、本件事故の前年である平成26年の年収は510万円。

死亡時32歳であり、67歳までの35年間、就労可能であったと認定。

原告ら一家の支柱として原告らを扶養していたものであるから、生活費控除率は30%。

510万円×(100%-30%)×16.3742

 

 

交通事故損害と転居費用

遺族の転居費用6万2640円も損害に含めています。

本件事故当時、被害者は、妻及び当時4歳の長男と同居し、扶養していました。

妻子は、被害者の死亡後、当時居住していた自宅(賃貸住宅)から妻の実家へ転居しました。

その転居費用として6万2640円を負担したことを認定。


被害者は原告ら一家の経済的な支柱であったところ、同人が死亡したことにより、同人の収入が途絶えたものであるから、原告らが賃料の負担を要する当時の自宅から賃料の負担がない実家へと転居したことはやむを得ないものというべきであるとして、転居費用も本件事故との間に相当因果関係がある損害と認めるのが相当としています。

 

 

 

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