裁判例-交通事故に関する弁護士相談についてのサイトです。神奈川県厚木市・横浜市の法律事務所が管理しています。

HOME 〉裁判例

裁判例

無料相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

裁判例:代表取締役の事故と会社損害

 

名古屋地裁平成31年3月27日判決

名古屋地裁平成31年3月27日判決です。

代表取締役の事故で、会社の損害が認められるかが争われました。

このような損害賠償請求の場合、会社の規模や、代表取締役の業務内容が問題となります。

 

事案の概要


原告甲野が運転する自動車と、被告が運転する自動車との間で生じた交通事故。

原告甲野が、本件事故により受傷。

治療費等の損害賠償を請求。

さらに、原告甲野が代表取締役である原告会社が、原告甲野の受傷により外注費が損害として発生したとして、こちらも請求した事案。


原告会社は、金属加工等を業とする株式会社。
原告甲野は、本件事故以前から、原告会社の代表取締役でした。

 

事故内容としては、平成26年1月20日午前10時45分頃に、被告車両が、信号待ち停止中の原告車両に、ブレーキをかけることなく追突したというもの。

 

通院状況

本件事故により、原告甲野は、頚部捻挫、腰椎捻挫、両肩関節挫傷の傷害を負い、通院治療。


C整形外科に、平成26年1月21日~同年6月25日(実通院54日)
D病院に、平成26年2月7日、同月21日
E整形外科医院に平成26年4月3日
F病院に平成26年4月18日~同年5月16日(実通院7日)

というものでした。

 

原告個人の損害

さほど大きな争点はなく、通院慰謝料くらいの争いでした。

複数の病院に言っているのは、本件事故後頭痛があり、雨の日に悪化する旨を訴えたことから紹介等を受けてのものでした。

傷害慰謝料の認定は80万円。


本件事故の態様、原告甲野の受傷内容・程度、通院状況等を考慮の上、80万円を相当としています。

原告らは、通院治療を中止した平成26年6月25日時点でも症状は未だ大きく改善していなかったことを主張するが、原告甲野の受傷内容、通院経過や、同月27日時点でC整形外科の担当医師の作成した「医療照会書兼回答書」には原告
甲野の傷害は大きく改善していたことなどが記載されていたこと、原告らの主張によっても1回の通院治療に要する時間が長時間に及ぶものではなく、平成26年6月25日以降において原告甲野が通院治療する時間がなかったとまでは認められないことからすると、原告らの上記主張を採用することはできないとしました。

原告らは、実通院の終了後も治療が必要な状態との主張をしていましたが、これは通りませんでした。


原告会社の損害

本件での主な争点は、会社自体に損害があったかどうかです。

代表取締役とはいえ、個人と法人は別人格。法人にも損害が認められるのか、自営業者との比較などで問題になります。

 

原告会社は、金属加工等を目的として、平成8年3月19日に設立された株式会社。もともとは原告甲野の個人事業であったが、納税上のメリットや、取引先からの要望から法人化。

原告会社の本件事故時の資本金は300万円であり、名目上、そのうち200万円を原告甲野が出資し、残りの100万円を原告会社設立時の従業員が50万円ずつ出資した形になっていましたが、実際に出えんしたのは全額原告甲野。

 

原告会社の経営実態

このような裁判では、個人事業に近い、代表取締役の稼働が大きい点が主張のポイントになってきます。

 

原告会社の売上高は、平成23年度が7855万4445円、平成24年度が5998万2871円、本件事故日を含む平成25年度が8517万2911円。


本件事故当時、原告会社の取締役は、原告甲野のみで、従業員は、原告甲野の他に、原告甲野の妻、子、親族ではない1名がいたのみ。


本件事故前の平成24年度及び本件事故日を含む同25年度の原告甲野の役員報酬はいずれも660万円。平成26年度は495万円。

原告会社の主な業務は、製造機械のオーバーホール及びメンテナンスであり、製造機械の部品交換が必要な際には、原告会社において部品を分析の上、設計・製造。
原告会社において、部品を製造する際は、設計(原告甲野において改良の余地のあるものについては原告甲野が設計する。)に応じて加工機械をセッティング、プログラミングした上で材料をセットし、加工機械を動かし、加工が終了して加工機械が止まれば、加工された部品を取り出して次の材料をセットし、また加工機械を動かし、加工された部品に
ついてはバリ取り等の仕上げ作業を行うという手順。

原告会社において、上記作業のうち、改良の余地のあるものの設計や、加工機械のセッティング、プログラミングの作業については、ほぼ原告甲野しか行うことができなかったというものです。

 

プログラミングとは、加工機械の近くに床から垂直に設置されているキーボードによって、加工機械の動作を指示するプログラムを入力する作業であり、立ったまま中腰の姿勢でキーボードを操作する必要がありました。


原告甲野の受傷状況


原告甲野は、本件事故に遭い、頚椎捻挫、腰椎捻挫、両肩関節挫傷の傷害を負いました。


上記受傷のため、原告甲野は、原告会社における業務のうち、加工機械のセッティングのために加工素材の重い金属を移動させたり固定したりすることや、加工機械のプログラミングのため中腰の姿勢でキーボードを操作することが困難に。

原告甲野は、通院していたC整形外科の医師から休業の指示をされていたが、上記のような作業以外の、他の従業員に対する指示や、A会社からの受注に関する業務等は休まずに行っていました。

原告会社は、原告甲野において上記業務が困難となったため、部品加工・製作を行うことが困難となり、既に発注を受けていた製造機械のオーバーホール等に必要となる部品の加工・製作を、他社に外注。

 

A会社からの受注等

原告会社は、A会社の埼玉工場が雪害のため屋根が崩落したとして、平成26年2月下旬か3月頃、商社を通じて、同工場内の設備機械のオーバーホールを依頼されました。

原告甲野が同工場の被害状況を見に行ったところ、設備機械のオーバーホールよりも工場の復旧が優先されるべき状況でした。

A会社は、工場の復旧工事について、大手の建設会社に相談していたが、地震等の影響から大手の建設会社では人的・物的余裕がなく、復旧までの工期が長期にわたる旨の回答を受けていました。

A会社は、原告甲野に工場復旧の相談をするようになり、原告甲野は、A会社に対し、大手建設会社の見積りよりも、工期を短縮し、費用も半減する方法のアイデアを伝えたところ、A会社から見積りを出すことを依頼されました。

原告甲野は、見積りを作成するため、平成26年4月から、A会社の埼玉工場に通うようになり、愛知県と埼玉県を行き来する生活に。


平成26年6月、A会社から正式にA会社埼玉工場の復旧工事を受注。


同工事において、原告会社が行った業務は、工場復旧のグランドデザインを考えた上で、それを具体化するため、愛知県内の専門家や業者に依頼するというものでした。

 

本件事故と原告会社の損害との相当因果関係


本件事故により受傷したのは原告甲野であり、原告会社は、本件事故により直接財産権等を侵害されたものではなく、直接の被害者ではありません。

もっとも、会社の実権が特定の個人に集中し、その個人に会社の機関として代替性がなく、個人と会社が経済的に一体の関系にあるような場合には、その個人の受傷による会社の損害についても、会社から加害者に損害賠償請求が認められるべきです。

原告会社の実質的出資者は原告甲野のみであり、原告会社の唯一の取締役でもある原告甲野に原告会社の実権が集中していたことが認定されています。


また、本件事故当時、原告甲野は原告会社の唯一の取締役にあり、原告会社の主要な業務である製造機械のオーバーホールやメンテナンスにおいて、設計、加工機械のセッティング、プログラミングの作業は、ほぼ原告甲野しか行うことができなかったのであるから、原告甲野は、原告会社において中心的役割を果たしており、原告甲野に替わりうる人材は原告に存在しなかったとしています。

さらに、原告会社は、原告甲野が行っていた事業を法人化したものであって、その実質的出資者が原告甲野のみであること、その売上高も個人会社の規模を超えるものとはいえないこと、原告甲野以外には3名の従業員しかおらず、その業務内容は経理又は原告甲野の作業の補助や見習いにすぎないことからすると、原告甲野と原告会社は、経済的に一体の関係にあるというべきであるとしました。

これにより、原告会社に発生した損害も本件事故と相当因果関係があるとしました。

原告甲野の治療終盤までの外注費を損害として認定しています。

 

会社代表取締役の交通事故で、会社自体に損害が発生している場合には参考にしてみてください。

 

交通事故のご相談は以下のボタンよりお申し込みください。


 

無料相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

オフィス

ジン法律事務所弁護士法人

代表者:弁護士 石井琢磨

〒243-0018
神奈川県厚木市中町4-14-3
雅光園ビル702号室

TEL:046-297-4055

 

<主要業務エリア>

クリック 相談予約

ジン法律事務所弁護士法人Webサイト

厚木本店

 

横浜駅前事務所

ページトップへ