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裁判例:永住資格者の逸失利益

 

京都地裁平成31年3月22日判決

京都地方裁判所平成31年3月22日判決です。

永住資格がある外国籍の年少者の死亡事故でした。

逸失利益の算定における平均賃金を日本人と同様に算出して良いか、事故後、数ヶ月の親の休業損害を認めて良いか等が争点となりました。

 

事案

本件事故により被害者が死亡した事件です。

発生日時は、成27年12月17日午後4時08分頃。

発生場所は、京都市南区の交差点でした。

交差点は、信号機による交通整理が行われていませんでした。

東西方向の道路には一時停止規制があり、南北方向の道路には一時停止規制がなく、両道路ともに左右道路の見通しは悪かったという現場状況。

被害者は、歩行者(2003年生まれ)でした。

交差点で、車2台が出会い頭に衝突。
被告Y1車両が西から東に向かって本件交差点に進入し、被告Y2車両が北から南に向かって通行して本件交差点に進入したところ、両車両が衝突。衝突の衝撃により被告Y1車両が横転し、折から本件交差点南東側を歩行中の被害者に衝突。

被害者は、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い、平成27年12月24日午後7時46分頃、死亡。

 


父母が相続を理由に原告に、また、妹も固有慰謝料の請求を理由に原告になった事件です。

 

逸失利益について

損害の中で、逸失利益が争点となりました。

逸失利益は、事故により失われた将来の収入。

この計算では、基礎収入をいくらとするかが問題となります。今回の事件では、被害者は、死亡時11歳。

当然、仕事はしていないので、基礎収入は実際の収入ではなく、平均賃金から算出することになります。

ここで問題だったのは、被害者は中国籍であったという点です。

被告は、基礎収入は、被害者が年少者で未就労であったから、日本人と同様の水準で考えることはできず、中国での女性の平均的な賃金水準(我が国の収入の3分の1程度)によるべきである主張。

仮に我が国での給与水準を前提とするとしても、平成27年賃金センサス女性全年齢により372万7100円とすべきで、生活費控除率については、生活費控除率は50%とすべきであると主張しました。


これに対し、原告は、被害者は永住者資格を有していたと反論。基礎収入は、平成27年賃金センサス学歴計男女計全年齢により489万2300円とすべき、女子年少者であり、生活費控除率は30%とすべきであると主張しました。

 

この点について、裁判所は、被害者は「永住者」の在留資格を有していて、我が国での在留活動に制限がないから、日本人の女児と同じように逸失利益の算定をするのが相当であるとしました。


よって、基礎収入は、平成27年賃金センサス全労働者学歴計全年齢を採用して489万2300円と定め、就労可能年数は18歳から67歳までの期間(対応するライプニッツ係数の計算式:18.6985-5.7864)、生活費控除率は45%と認め、逸失利益は3474万3426円と算定できるとしました。
計算式:489万2300円×(100%-45%)×(18.6985-5.7864)

 

 

その他の損害

大きな損害費目として、死亡慰謝料については、本件事故態様、被害者の年齢及び家族構成等を総合的に考慮すれば、本件事故による死亡慰謝料を2150万円とするのが相当であるとしました。


葬儀費用について、証拠によれば、葬儀費用として237万6956円を要したことが認められ、そのうち150万円を本件事故と相当因果関係のある損害として認めるとしています。

 

墓石建立費等

年少者の死亡事故でよく問題になるのが墓石等の費用です。

本来であれば、必要があるような年齢ではなかった、こんなに早く必要になったのは、交通事故が原因であるとの主張です。

本件においては、証拠によれば、納骨手数料として1万6200円、永代使用料として100万8333円、墓石建立費として248万4000円の合計350万8533円を要したことが認められるが、上記葬儀費用150万円を超えて本件事故と相当因果関係のある損害として認めることはできないとしました。

基本的に否定されている内容となっています。

 

親の休業損害


被害者の両親は、従前、中京区の店舗において中華料理店を営み、平成27年7月頃、東山区の店舗を開業。

被害者は、上記両店舗で看板娘としてお手伝いをしていたが、中京区の店舗は、同年10月6日(本件事故の約2か月前)に火災に遭い休業し、本件事故当時は東山区の店舗のみで営業していました。


両親は、本件事故(平成27年12月17日発生)により精神的打撃を受け、本件事故日から平成28年4月6日までの約3.7か月間、東山区の店舗を休業。

また、両親は、本件事故後、中京区の店舗の再開を断念。


経営上の数字として、原告X1の
平成27年分(本件事故当年)の売上げは1438万8600円で、事業所得は237万8344円

平成28年分の売上げは1139万0960円で、事業所得は-124万9240円。


また、両親は、上記休業期間中も、従業員の給与月額25万円、家賃月額19万0463円、駐車場賃料月額2万5714円の合計で月額46万6177円を支払い続けていたという事情もありました。

 


両親は、約3.7か月間、東山区の店舗を休業したところ、平成28年分の確定申告書において、「中京店舗火災整理のため平成28年1月1日から平成28年4月7日まで休業し、その後は東山店舗にて営業を再開した。」としていて、その全期間を本件事故と相当因果関係のあるものとまでは認められないとしました。


被害者の死亡による両親の悲しみが深いものであり、相応の期間の休業はやむを得なかったものと認められるから、被害者の死亡日(平成27年12月24日)から平成28年1月31日までの間(1.2か月間)の休業について、本件事故と相当因果関係のあるものと認めるとしました。


 

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