
親族の付添費用が争われた事案です。
海外からの帰国費用、複数回の帰国費用が損害に含まれるか、保険会社は争いました。
症状が重い事故、退院後の生活環境の調整が求められる事案ではチェックしておいた方が良いでしょう。
京都地方裁判所平成31年3月1日判決です。
原告(当時83歳)が歩行中。
警察官が運転する普通自動二輪車との間で交通事故。本件事故当時、勤務中。
発生日時は平成27年3月2日午後3時37分頃。
被告車両が走行中、横断歩道のない道路上を横断中の原告と衝突。
原告は、肝破裂、右副腎損傷、両側肺挫傷、右多発肋骨骨折、多発胸椎横突起骨折、右示指・中指腱断裂・開放骨折、右環指関節内骨折等の受傷。
52日間B病院に入院、81日間C病院に入院。
後遺障害診断。
原告の後遺障害については、自賠責保険の被害者請求において、
右手指の機能障害について、(ア)右示指、中指の機能障害につき10級7号「1手のおや指以外の2の手指の用を廃したもの」に該当する、(イ)右環指の機能障害につき14級7号「1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」に該当するものとして、これらが併合10級相当とされ、
腹部外傷後の胆のうの障害(肝損傷に伴う胆のうの摘出)について、13級11号「胸腹部臓器の機能に障害を残すもの」に該当するものとされたが、
その余は自賠責保険における後遺障害に該当しないものとして(股・膝・足の両下肢の関節機能障害を含む。)、併合9級と認定。
過失相殺や後遺障害の程度も争点となりましたが、今回は損害論を取り上げます。
家族の帰国に関する費用が問題となりました。
原告の長男は、本件事故の翌日(平成27年3月3日)から同年7月12日までの間に30日間、原告の姪は同年3月2日から同年7月8日までの間に25日間、原告の他の姪は同年3月11日から同月20日までの間に5日間、それぞれ原告に付き添いました。
長男は、本件事故当時、タイ国に駐在していたが、原告が会話困難な状態になり、病院からキーパーソンを定めるように要請され、長男が帰国可能な期間は長男が、その他の期間は他の親族がフォローするという体制をとりました。
原告の治療方針、転院等は長男が、洗濯や生活必需品の準備等は姪らが中心として行いました。
これに対し、被告は、入院中は病院による完全介護体制にあり、付添いの必要性が明らかではない、親族としての情愛に基づく見舞いの趣旨であり、本件事故と因果関係のある損害には当たらないと反論しました。
家族は、B病院入院中の原告に付き添ったところ、B病院において完全看護態勢がとられていたことを考慮しても、原告の本件事故直後の症状の重さに照らして、付添いの必要性は認められるとしました。
しかし、原告がC病院に転院する頃には相当の改善がみられていたから、C病院での付添いの必要性は認められないと指摘。
ただし、原告が、C病院を退院した後、自宅での生活に戻るのが困難であったことは上記のとおりであって、施設入所等の環境調整が必要であったと指摘。
長男は、そのために帰国していたから、その必要性は認められるとしました。
よって、長男の付添交通費については、第1回目から第5回目の帰国までの間は付添いのため、第6回目から第11回目の帰国までの間は環境調整のため、それぞれ必要であったといい得るとしました。
そして、第2回目、第7回目から第9回目の帰国までについては、勤務先の出張扱いにしてもらって、関西国際空港又は中部国際空港とバンコクとの往復は勤務先の負担とされるなど、ことさらに損害が拡大しないように努めていたと評価できることからすると、長男の付添交通費については全額を本件事故と相当因果関係があるものと認めるのが相当であるとしました。
姪らの付添交通費については、上記付添いの必要性に照らし、原告がB病院に入院していた期間について認められるのはもちろんのこと、C病院への転院後の期間についても見舞い等のためのものと理解できるから、原告の主張する金額を認めるとしましました。
入院付添費として、原告がB病院に入院していた期間中に限り、付添いの必要性が認められ、日額6500円として算定されました。
交通事故の被害症状によって、親族の付添費用が損害として認められることも多いです。
重症であれば認められやすくなります。
ただ、そのうち付添交通費について、遠方だと費用が高額化する傾向もあり、保険会社が争ってくることも多いです。
今回は、海外からの帰国費用も含まれており、これが、全期間認められるのかどうかが争点となりました。
保険会社は、病院の看護状態を主張氏争いましたが、症状の重さのほか、環境調整のため動く必要があったとしてこれを肯定しています。
純粋な付添の必要性のほか、そのように動く必要があったという場合には、しっかり主張した方が良いといえるでしょう。
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