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裁判例:窃盗車両の管理と過失

 

東京地裁平成31年2月20日判決

盗難車両による交通事故が発生した場合、管理責任を問われることがあります。

それが過失となるのか争われたケースを紹介します。
東京地裁平成31年2月20日判決です。

 

事案

事故は、信号機により交通整理の行われていない交差点。

直進進入した氏名不詳者運転の大型貨物自動車(ダンプカー・以下「原告車」という。)と、対向車線から右折してきた被告運転の普通乗用自動車(以下「被告車」という。)が衝突。

原告車の所有者との間で締結した自動車保険契約に基づき原告車に係る車両保険金を支払った保険会社が原告。

原告は、保険法25条1項に基づき、所有者の被告に対する民法709条に基づく損害賠償請求権を代位取得したことを理由として、被告に対し、修理費、レッカー費用を請求。

 

交通事故態様

発生日時:平成29年10月26日午前2時30分頃

事故態様:氏名不詳者の運転する原告車が直進。被告車が、対向車線から右折。

原告車の左前部角と被告車が衝突した。

 

氏名不詳者というのは、窃盗犯人。

本件事故前に、駐車中の原告車を窃取したのでした。

 

本件車両の保管状況

原告車は、石材を運搬するための車両として使用されていたものでした。


自動車保管場所証明書では、原告車の保管場所は笠間市とされていましたが、平成20年頃から、社長の許可を得た上で、会社の敷地内の駐車区画に原告車を駐車して保管していました。

本件事故当時、この会社は廃業しており、その敷地内に管理人等は常駐しておらず、敷地出入口にはカラーコーンが設置され、駐車区画には、原告車のほか、同業者のトラックなど約17台が駐車されていた状態

所有者は、本件事故前、茨城県笠間市の同業者から、同地域周辺では盗難被害が多いという話を聞いていたものの、会社の敷地内の駐車区画に駐車中の車両が盗難被害に遭うことはありませんでした。

 

本件車両の窃盗状況

所有者は、本件事故の約1週間前の朝、仕事に向かうため、会社の敷地内の駐車区画に駐車中の原告車に乗ろうとした際、原告車の助手席側のドアの鍵穴がドライバーの様な物で突かれた痕跡があるのを確認し、周囲に駐車中の車両にも同様の痕跡があるのを確認しました。


原告車の助手席側のドアの鍵穴は潰され、外側から施錠することはできない状態であったが、内側から施錠するには問題がなかったことから、所有者は、いたずらされた程度に考え、特に気に留めることはありませんでした。

 

所有者は、平成29年10月25日午後5時頃、仕事を終え、会社の敷地内の駐車区画に原告車を駐車し、原告車を施錠した上で、同所から約2kmの距離にある自宅に帰りました。

その際、原告車のエンジンキーを持ち帰り、自宅で保管。


その後、氏名不詳者が、敷地内に侵入し、同敷地内の駐車区画に駐車中の原告車の助手席側のドアのキーシリンダーを外して運転室内に侵入し、ハンドルロックを解除して、いわゆる直結の方法でエンジンを始動させ、同所から原告車を持ち出したのでした。


氏名不詳者は、平成29年10月26日午前2時30分頃、原告車を運転して、本件交差点を直進しようとしたところ、被告の運転する被告車が、対向車線から右折してきて、原告車の左前部角と被告車が衝突するという本件事故が発生。

本件事故後、氏名不詳者は、直ちにその場から逃走し、被告は、一時的に意識を失い、意識を取り戻してからは、周囲にいた人に助けられ、現場に到着した救急車により病院へ救急搬送されました。

 

所有者は、平成29年10月26日午前3時頃、自宅で就寝していたところ、警察官から連絡があり、原告車が交通事故を起こしたが、事故現場に運転手が見当たらないので、事故現場に来るよう要請されました。


同日午前3時30分頃、事故現場に到着。

警察官は、所有者に対し、原告車の助手席側のドアの鍵が壊され、ハンドルロックも解除され、エンジンはいわゆる直結の方法で始動された痕跡がある旨説明しました。

 

被告の共同不法行為責任

原告は、被告と氏名不詳者とは、所有者に対して共同不法行為責任を負うと主張、被告はこれを争い、自らの過失割合8割の限度でのみ原告車両の損害を賠償すべき責任を負うにとどまると反論。

裁判所の認定は以下のとおり、原告の主張を認めました。


本件事故は、被告車が本件交差点を右折した際、対向車線を直進してきた原告車と衝突した交通事故であるから、被告には、本件交差点を右折するに当たり、対向車線を走行する車両の有無及び動静を注視し、その走行を妨げることのないよう注意すべき義務を怠った過失があることは明らかであるとしました。


一方、原告車を運転していた氏名不詳者においても、本件交差点を直進するに当たり、対向車線から右折してくる車両の有無及び動静を注視し、当該車両との接触を回避すべき義務を怠った過失があると認定。


そして、上記のとおり、同一の日時、場所において、双方車両の運転手の過失により自動車同士が衝突して原告車が損傷し、その所有者に損害が生じた場合には、所有者に対する関係では、被告と氏名不詳者とは民法719条1項前段の規定する共同不法行為責任を負うというべきであるとしました。


よって、被告は、本件事故により生じた所有者の損害について、氏名不詳者との間の過失割合にかかわらず、氏名不詳者と連帯して賠償すべき責任を負うとして、原告の主張を認めました。

 

所有者の過失の有無及び割合

被告は、会社の敷地と本件事故との場所的、時間的近接性や原告車の盗難の危険性を事前に予見していたことなどから、所有者には、原告車の保管場所を変更するなどして、原告車の盗難の発生を未然に防止すべき義務を怠った過失がある旨主張しました。

所有者は、会社の敷地内の駐車区画に原告車を駐車させた際、原告車を施錠して、エンジンキーを自宅に持ち帰って保管していたところ、氏名不詳者が、原告車の助手席側のドアのキーシリンダーを外し、いわゆる直結の方法でエンジンを始動させて原告車を窃取したものですが、自動車の所有者が自動車を駐車させる場合、当該自動車を施錠して、エンジンキーを当該自動車の保管場所と全く異なる場所で保管していたときには、当該自動車を第三者が容易に持ち出し得る状態に置いたなど特段の事情のない限り、原告車の管理上の義務は尽くされていたというべきであるとしました。


この点、所有者は、自動車保管場所証明書に記載された保管場所とは異なる会社の敷地内の駐車区画に原告車を駐車させていたが、同所には、原告車のほか、同業者のトラックなど約17台が駐車されており、本件事故前、同所に駐車中の車両が盗難被害に遭うことはなかったから、同所の管理状況に照らしても、同所に原告車を駐車させたことをもって、原告車を第三者が容易に持ち出し得る状態に置いたということはできないと指摘。


また、所有者は、本件事故前、茨城県笠間市周辺では盗難被害が多いという話を聞き、本件事故の約1週間前には、原告車の助手席側のドアの鍵穴がドライバーの様な物で突かれた痕跡があるのを確認していたが、このことのために、直ちに原告車の保管場所を変更すべき義務があったということはできないとしました。


よって、本件において原告車を第三者が容易に持ち出し得る状態に置いたなど特段の事情は認められず、所有者には原告車の管理上の過失は認められないとして、被告の主張を排斥しました。

その結果、損害として、原告車の時価額110万5000円(経済的全損)及びレッカー費用6万2878円の合計116万7878円について、原告は所有者の被告に対する損害賠償請求権を代位取得したとして、認定しました。

 

盗難車両がらみの損害賠償請求では、このように管理状況、窃盗の態様が問題になります。

同種事件の過失判断の参考にしてみてください。

 

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