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裁判例:自転車傘差し運転の過失相殺

 

京都地裁平成31年1月11日判決

 

自転車事故の過失相殺と、通勤事故と使用者責任が問題になった裁判例です。

自転車は傘をさしながらの運転でした。

事案

片側1車線の道路で、自転車と原付バイクの衝突事故です。

事故は、平成27年4月10日午前8時46分頃に発生。

原告が自転車運転者。25歳。被告が原付きバイクの運転者です。

原告は、自転車を運転、車線左側を、傘をさしながら進行していました。

道路を横断するために右方向に進路を変えました。

そこに、右後方から進行してきた被告運転の原動機付自転車と衝突したという事故です。

 

被告は、通勤中に起こした事故だったため、勤務先会社に対する使用者責任も争点となりました。

会社側は責任を否定。

 

 

後遺障害事前認定

原告は、D病院形成外科において、右顔面骨骨折について、同病院眼科において、右頬骨骨折術後について、E整形外科
において、頸椎捻挫及び腰椎捻挫について、それぞれ症状固定診断を受けました。

その後、後遺障害等級について、以下のとおり、併合12級という内容の事前認定を受けました。

ア 右顔面骨折後の右顔面知覚麻蝉の症状について、右頬骨骨折が認められ、右三叉神経第二枝の神経支配領域の障害であることから、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとして、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当。


イ 頸椎捻挫後の頚部痛、事務仕事により頚一上肢痛ありとの症状について、14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当。


ウ 腰椎捻挫後の腰痛(同じ姿勢をしていると増悪する)の症状について、14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当。


エ 右頬骨骨折後の眼球の運動障害については、後遺障害には該当しない。

 

事故態様と過失相殺

原告は、傘を差しながら、右方向に進路を変えたところ、後方から来ていた被告車両に気付きませんでした。


他方、被告は、時速約30kmで走行。
被告車両は、自己の進路の前方に進出してきた原告自転車を避けるためにブレーキを掛けたが停止できず、約5.5m走行して衝突しました。

このような点から、裁判所は、本件事故は、原告自転車が交差点以外の場所において道路を横断した場合の事故であると位置づけました。

被告には、前方不注視及び間隔保持不十分の加湿を認定。被告は、原告自転車の横断行為を予測することができず、かつ、原告自転車の認識後にブレーキを掛けたとしても停車することが不可能であったから、被告に過失はない旨主張していました。しかし、被告は、仮に原告自転車が横断しなかったとしても、その側方を追い抜くことになるのであるから、被追抜車に対してその挙動を十分に注意し、側方の感覚を十分にとっておく必要があったとして、被告の主張を排斥。

他方、原告には、被告車両が至近距離まで迫っていたにもかかわらず横断を開始した点で、後方確認不十分の過失があり、また、傘を差しながら運転したことについて安全運転義務違反が認められる(傘を差しながら運転したことにより、原告の視野が狭くなり、被告車両が至近距離まで迫っていたことに気付かなかったものと推認できる)としました。

これらの点から、原告の過失も相当大きなものだったとして、原告40%、被告60%という認定をしました。

 

使用者責任についての裁判所の判断

被告の通勤中事故ということで、被告会社の使用者責任も争われました。

被告会社は、不動産の売買、賃貸、管理及びその仲介等を目的とする株式会社。

被告会社の本社へは、最寄り駅から徒歩数分の距離でした。

被告本人は、事務職を担当し、被告会社の業務中に被告車両を用いることはありませんでした。


被告は、就職時以降、被告会社から、通勤手当として、電車通勤を前提に計算された金額として月額1万円(片道200円×2×25日)の支給を受けていました。

被告は、就職時以降、電車通勤していたが、途中から、被告車両で通勤するようになりました。

ただし、通勤手当が受給できなくなることから、通勤方法を変更した旨を被告会社に報告していませんでした。

 

被告は、勤務時間中、被告会社の入居するマンションの共用駐輪場に被告車両を駐輪していました。

共用駐輪場には被告車両の他にも同マンションの入居者等の自転車や原動機付自転車等が駐輪され、入居者ごとに駐輪場所が区分されていませんでした。

 

このような事実関係のもと、裁判所は、使用者責任について否定しました。

被用者が起こした交通事故について使用者の責任を認めるには、被用者の運転が使用者の「事業の執行について」されたものであることが必要です。

まず、本件事故は、被告の自家用車での通勤中に発生したもので、被告会社の業務を遂行していた最中に発生したものではありませんでした。そして、被告が、被告会社で事務職を担当し、被告会社の業務中に被告車両を用いることはなかったこと、被告が被告会社から、電車通勤を前提に通勤手当の支給を受けていたこと、被告の勤務時間や被告会社の所在地に照らして、公共交通機関による通勤が容易であり、通勤のために被告車両を利用する必要性が低かったことが認められるとしています。そうすると、被告の本件事故の際の運転が被告会社の業務と密接な関連を有しているということもできないとしました。

被告が、被告会社の勤務時間中、共用駐輪場に被告車両を通勤していた点については、上記の駐輪状況に照らすと、被告会社が被告車両の駐輪を把握できなかったこともやむを得ない面があったと指摘。通勤手当を支給していたことも併せて考慮すると、被告会社が被告の被告車両での通勤を認識し、黙認していたということもできないとしました。

これらの点で、自己の個人的な便宜のための自家用車使用であり、事業の執行についてされたものではないとして、使用者責任を否定しました。


自転車とバイクの衝突事故や使用者責任の追及の際には参考にしてみて下さい。

 

 

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