交通事故により、リース車両が全損評価となったことでリース契約が解約となった場合の中途解約違約金について損害に含まれるか争われたケースです。
リース契約の内容を認定して、損害賠償請求については否定しています。
信号機による交通整理の行われていない十字路交差点において、原告がリース車両を運転。
被告運転の普通乗用自動車と出会い頭に衝突した交通事故でした。
発生日時は平成29年10月19日午前10時20分頃。
本件道路には本件交差点の西側手前に指導停止線(法定外表示の一つであり、一時停止の交通規制が行われる必要はないが、停止して安全確認を行うことが好ましい場所に白色の破線[通常3ブロック]で表示されるもの)が設けられていました。
原告とリース会社の間では、リース車両が損傷を受けた結果生じた損害賠償請求権が原告会社に帰属する合意がされました。
過失相殺以外に、損害論でリース車両の取り扱いが問題となりました。
被告は、被告車の修理費用は概算で150万円であるが、被告車の時価額が75万7000円であり、修理費用が車両時価額を上回るから、経済的全損として、被告車の時価額が損害となると主張。
さらに、被告車が全損であるため、リース契約を解約せざるを得ない状況になり、中途解約違約金も損害と主張。リース車両が珍しくない現在、経済的全損を含む全損の場合における中途解約違約金は通常人が予測可能な通常損害に当たると主張しました。
この点について、仮にリース契約の約款上中途解約金が発生するとしても、事故により被害車両が経済的全損となった場合の車両損害は、原則として車両時価額となり、車両時価額を上回る中途解約金は特別損害であり、本件事故において、中途解約金は損害とはならないと反論されています。
裁判としては、双方から損害賠償請求訴訟が提起され、併合されています。
物損の車両時価額75万7000円については損害として認定しました。この点については、当事者間に争いがないものとしてそのまま認定されています。
これに対し、リースの中途解約による損害は0円として否定しました。
中途解約金には未払リース料や手数料等のほか、事故によって毀損したことを前提とする車両価額相当額が反映されているのが一般であるところ、原告は、リース会社との間で、本件事故によりリース車両が損傷を受けた結果生じた損害賠償請求権が原告に帰属することを合意しているから、原告が中途解約違約金相当額についても損害賠償請求ができるとすると、車両価額相当額の二重取りを認める結果となり相当ではない、との理由付けでした。
そもそも中途解約金はリース契約に基づき発生する債権であり、その内容は未払リース料や手数料等の交通事故と直接関係のないものを含むものであり、その金額の算定もリース契約の約款等に基づいて行われるから、仮に原告がリース契約に基づき中途解約違約金の支払義務を負うとしても、その金額が直ちに本件事故との間に相当因果関係がある損害とはいえないとしています。
リース契約をしていると、途中解約は原則としてできず、解約した場合には違約金が発生することになります。
これが車両の損害として認定されていればよいのですが、それを上回る違約金を負担している場合でも、これを損害に含められないとすると、被害者としては、自己所有の車両である場合よりも、リース車両の方が負担が増えることになってしまいそうです。
とはいえ、違約金全額を損害として認めると、本件で指摘されているように、車両損害と二重に評価されているとも思われるので、そのバランスが難しいところです。
リース契約の違約金を含めた損害賠償請求をする場合には、このような裁判例を参考にしたうえで、主張方法をよく考えないといけないでしょう。
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