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裁判例:倉庫内事故と過失相殺

 

横浜地裁平成30年12月11日判決

倉庫内での事故と過失相殺が問題になったケースです。

倉庫内など、業務中の事故で過失相殺の主張をされた際には参考になる考え方です。

事案

倉庫で作業中だった18歳男性従業員が、時速2kmから3kmで後退してきた被告運転の加害車(大型貨物自動車、
トレーラーヘッド)の後部と作業用スロープとの間に胸部を挟まれて死亡した事故です。

被害者は、コンテナからの荷下ろし作業で働き始めてから2週間程度。

過失相殺、死亡慰謝料、逸失利益が争われました。

今回は過失相殺の点を紹介します。

 

裁判所の認容額

被告らは、原告に対し、連帯して7092万1263円及びこれに対する平成27年10月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払えというものでした。

訴訟費用はこれを3分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの連帯負担。

 

 

倉庫内での作業内容は?

センターにおいては、トレーラーに積載されたコンテナ内からフオークリフトを使って積み荷を下ろすため、倉庫床面とトレーラー上のコンテナの荷下ろし口とを接続してフォークリフトをコンテナ内に進入させるための鉄製のスロープを使用しており、Bセンターの倉庫建屋の下屋の北西側搬出入口付近にあるトレーラーヤードには、固定式のスロープ(以下「下屋側スロープ」という。)が設置されていました。

また、同センターの敷地北側角の事務所前には、移動式のスロープ(以下「事務所前スロープ」という。)も設置されていました。


下屋側スロープはスロープ自体を移動させることができないことから、荷下ろし作業の工程は、トレーラーの運転手がコンテナを積載したトレーラーを下屋側スロープの2メートル程度手前に停止させ、倉庫作業員が、荷役予定書とコンテナ及び封印シールに記載されたコンテナ番号とを照合した上で、封印を切りコンテナの扉を開けてコンテナ本体に固定した後に、運転手がトレーラーを後退させてコンテナの荷下ろし口を下屋側スロープに接続させ、下屋側スロープの端部に付属した上下可動式のフラップ板(あおり)を倒してフォークリフトが通れるようにして、積み荷を下ろすというものでした。


倉庫作業員は、コンテナの後部がフラップ板に衝突することを避けるため、トレーラーの後退に先立ち、あらかじめフラップ板を持ち上げておく必要があるが、フラップ板は非常に重いため、通常は二人で持ち上げていました。

 

事故の発生状況は?


被告が事業用大型貨物自動車(コンテナセミトレーラーを牽引するトラクター(いわゆるトレーラーヘッド)。)を運転。

合板を積載した海上コンテナをBセンター倉庫下屋のトレーラーヤードに搬入。

被害者が倉庫作業員としてコンテナの封印を切りました。

コンテナの扉を開けてコンテナ本体に固定。

被告は、コンテナの荷下ろし口を下屋側スロープに接続させるため本件自動車を後退。

この際、車両の後方の安全を確認する義務を怠り、本件自動車の後方にいた被害者を本件自動車のトレーラー部分後部と下屋側スロープのフラップ板との間に挟んでしまいました。

 

この業務の指導では、以前に、「固定式スロープを使用した荷下ろし作業で最も危険なことは、後方に倉庫作業員が残っているうちにトレーラーが後退を開始することである」「コンテナの扉を開けたらトレーラーが後退してくるので、すぐにトレーラーの後方から離れ、トレーラーの後部と下屋側スロープとの間に立ち入ってはならない」などという話が、荷下ろし作業中に口頭で伝られていました。

ただ、具体的な業務マニュアルは存在しませんでした。

 

被害者の過失は?

本件事故の発生直後、下屋側スロープのフラップ板は倒れており、被害者が背中を本件自動車方向に、胸を下屋側スロープ方向に向けた状態で、本件自動車の後部と下屋側スロープとの間に胸部を挟まれた状態であったことからすると、本件事故の際に上記フラップ板が倒れていたことは明らかといえるとしています。

下屋側スロープにおいては、コンテナの後部がフラップ板に衝突することを避けるため、トレーラーの後退に先立ってフラップ板を持ち上げておく必要があり、そのことは倉庫作業員の役割であったところ、本件事故の際には、本件自動車が後退の態勢にあるにもかかわらずフラップ板が倒れていたのであり、他方、その場には被害者以外の倉庫作業員がいなかったことからすると、被害者は、フラップ板が倒れていることに気付いて、本件自動車の後部とフラップ板との衝突を回避するため、その間に入ってフラップ板を持ち上げようとしていたところ、被告が後退させた本件自動車の後部と下屋側スロープのフラップ板との間に挟まれたものと認めるのが相当であると事故状況を分析しました。


被害者は、本件事故の時点で固定式スロープを使用した荷下ろし作業に従事してから2週間程度が経過していたのであるから、同作業の大まかな工程は一応理解していたものと推認されるとしています。

ここから、トレーラーの後部と下屋側スロープとの間に立ち入ることにより、これらに挟まれる危険があることは容易に認識することができたというべきであるとしています。

そうすると、本件事故の前、下屋側スロープのフラップ板が倒れていることに気付いた被害者としては、本件自動車の後部とフラップ板との衝突を避けようとするのであれば、既に本件自動車が後退の態勢にあるにもかかわらず、本件自動車の後部と下屋側スロープとの間に入り、非常に重く通常は三人で持ち上げるフラップ板を一人で持ち上げるなどという危険な方法をあえて選択するのではなく、本件自動車の運転手に一時停止を指示するなどの安全な方法をとるべきであったとしています。

過失相殺は?

ただ、運転者の注意義務違反は、後退に当たっての後方確認という運転としての基本的注意義務を怠ったものであり、加えて、運転者は、1年程度のトレーラー運転を経験している職業運転手である点も考慮されます。

また、被告会社は、被害者の雇用者であるから、雇用契約上の付随義務として、労働者である被害者が、労務提供のために設置する場所、設備若しくは器具等を使用し又は被告会社の指示の下に労務を提供する過程において、被害者の生命、健康等を危険から保護するよう配慮する安全配慮義務を負っているとしています。

被告会社としては、上記作業に従事する倉庫作業員に対する安全配慮義務として、コンテナの扉を開放した後、倉庫作業員が確実にトレーラーの後方から離れ、再び立ち入らないよ'うにするために有効と認められる措置を講ずる義務を負っていたものと認められるとしています。

作業中に口頭で伝えたことがあったにすぎず、被害者の派遣から数日間が経過した後は、被害者の作業を直接監督し又は作業の方法について具体的な指示を与えることもなかったとしています。

確実に危険を回避しつつ事態に対処する上では、極めて不十分なものであったといわざるを得ないとしています。

 

このような事情から過失相殺は1割としています。

 

 

 

 

倉庫事故のケースでは、参考にしてみてください

 


 

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