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裁判例:子供のPTSDと後遺障害

 

名古屋地裁平成30年11月21日判決

交通事故被害者の7歳の子のPTSD、後遺障害が争われた事件です。

裁判所の結論としてはPTSDに該当しないとして、否定。

事案

7歳児が乗っていた被害車両(普通乗用自動車)に加害車両(普通乗用自動車)が後ろから追突。

頭部外傷の傷害。

事故後、車に乗ろうとすると頭痛や吐き気の症状、車に乗ることを恐れて回避する行動に出ました。

そこで、原告は、PTSD、後遺障害による損害賠償請求で提訴。

 

被害者の主張するPTSDの症状とは?


本件事故後、原告には、本件事故前にはあり得ない症状が頻繁に出るようになったとの主張です。

具体的には、原告は、車に乗ると必ずといってよいほど頭痛、「気持ちが悪い」と吐き気を訴えるようになり、実際に車中で嘔吐するようにもなってしまったとのことです。

また、自宅での就寝後の夜中に、二階から一階に勢いよく降りてきて、乳幼児のように泣き叫び、身体を震わせながら両親に抱きつき、「怖い」、「痛い」などと言うようにもなったとのこと。

両親と一緒に寝ていても、突然飛び起きて、「怖い」、「痛い」、「来るな」、「あっち行け」などと叫びだすようになり、そういうときは、両親が原告を抱きしめ、10分以上なだめなければ落ち着かないとのことでした。

原告本人は、夜中にこのようなパニック状態に陥っていることを翌朝一切覚えていないのでした。


このように、原告が日常生活を過ごすに当たり、周囲(特に両親)からの助言・支援が欠かせないものとなり、また、車に長時間乗ることが困難になり、日常生活において頻繁に支障が生じるようになってしまったのでした。

 


PTSDの診断

原告は、病院の医師からPTSDとの診断を受けていました。

また、原告の症状はDSM-5による診断基準を満たしてもいました。

原告は、後遺障害12級相当と主張しました。

 

予備的主張として、仮に、原告がPTSDにり患していないとしても、原告は、本件事故により重大な精神的打撃を受け、症状が出現するようになり、症状固定後も残存していることからすると、原告は、本件事故により外傷性神経症を発症し、非器質性精神障害が残存するに至ったと考えるのが合理的と主張し、同じく後遺障害12級相当と主張しました。

 

裁判所による症状の認定

裁判所は、原告には、本件事故後、車に乗ろうとすると頭痛や吐き気が現れ、車に乗ることを恐れて回避するという症状が出たこと、本件事故以前に本件症状はなく、本件事故以外の要因は見当たらないこと、平成28年7月27日以降、本件症状に特段の変化を示す事情はないことが認められるから、原告には、本件事故を原因として、本件症状が生じ、残存しているものと認めることが相当と判断しました。


一方で、就寝後の夜中に起きて泣き叫んだり両親に抱きついたりする症状の主張について、本件事故後にその様な症状が発生したことが認められるものの、本件後遺障害診断書上には、後遣障害として上記原告の主張のような記載はなく、また、病院の診療録上、平成28年7月27日以降は、原告について、原告父又は原告母が上記のような症状を医師に伝えた形跡は認められず、原告が夜に寝ぼけるとか、うなされるとか、うめくことがあるということのみを伝えていることが認められることから、このような症状が残存しているとは認められないとしました。

 


裁判所によるPTSDの認定は?

DSM-5に基づいて原告が本件事故によりPTSDを発症したかについて検討するに、DSM-5においては、 診断基準Aとして、「実際にまたは危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事への・・・曝露」が必要なところ、本件事故は停車中の原告車両への追突事故であり、これによる両車両の損傷に対する修理見積頚は原告車両について38万0198円、被告車両について18万2000円に過ぎず、大きな損傷が発生するような事故ではなく、原告自身の外傷は他覚的初見の認められない頭部外傷にとどまり、同乗者である原告父、原告母らについても重症を負った事実は認められないとしました。

このような点から、原告の7歳という年齢を考慮しても、基準を満たすものとは認められないとし、医師の診断があっても、PTSDに該当するものと認めることはできないとして否定しました。

医師の診断書については、、 原告の症状がPTSDである旨の記載があるが、上記DSM-5等の一般的診断基準に照らしてどのように判断してPTSDと診断したのかが明らかではないとして、直ちに信用することはできないと排斥しています。

 

裁判所は、原告の症状については、非器質性精神障害と認定しました。

 

後遺障害の程度は?

その症状、行動の制限から、裁判所は、14級相当の後遺障害であると認定しました。

これに基づき、後遺障害慰謝料として110万円を認定しています。

しかし、後遺障害の逸失利益ついては、原告は若年であり、就労可能年齢に達するまで相当の期間があるところ、原告の後遺障害は非器質性の後遺障害にとどまり、症状固定後の症状消退の蓋然性が認められることから、将来の労働能力喪失は認められないとして、逸失利益は否定しました。

 

子供のPTSDと診断され、親は大変な思いをしているものの、反映されたのは、慰謝料がメインであったという事案になります。

 

 

子供のPTSDが問題になった際には、参考にしてみてください

 


 

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