事故により後遺障害が残ってしまった場合、家や自動車を改造しなければ、生活ができない場合があります。改造の必要性が認められれば、相当額を損害として請求することができます。
後遺障害の程度や内容によって、必要性が認められると、家屋改造費用、自動車の改造費について相当額の損害賠償請求が認められます。
特に、浴室やトイレ、玄関等の出入り口の改造費用は認められやすくなっています。
家屋の改造費ではなく、生活に適した物件への転居費用や、家賃の差額が損害として認められるケースもあります。
家屋の改造については、四肢の麻痺など、それまでの生活ができない重い後遺障害が残ったことが前提にされています。
後遺障害の程度によって、リフトやエレベーターの設置、バリアフリー化の費用が損害として認められることも多いです。
車椅子での移動が余儀なくされたとして、マンションへの転居が必要になり、マンション購入費用の10%やバリアフリー工事費を損害として認めた事例もあります。
実際に支出した改造費全額が認められず、一部の割合のみが認められるケースもありますが、これは、家族が、その改造によって利益を得る部分もあるということで、全額の請求が認められないものです。
家屋の改造費は、必要性を証明する必要がありますので、以前の家屋の状況では移動に支障が生ずるということで、図面や、写真などで、その不便さを裁判所に伝えていく必要があるでしょう。
自動車については、将来の買い替えも予定されているため、将来の改造費用も認められることになります。
高額な家屋改造費を認めた裁判例として、以下のようなものがあります。
家屋改造費用については、家族が便利になるケースもあるため、かかった費用の一部だけが損害として認められるということが多いです。
家屋の改装費が認められている裁判例としては、四肢の麻痺などが多いですが、他にも、遷延性意識障害、高次脳機能障害、下肢欠損の後遺障害などが目立ちます。
後遺障害の2級以上で認められるケースが多いですが、3級以下でも家屋改造費が認められることもあります。
股関節に関する後遺障害、麻痺までは認められなくても四肢の痺れや歩行困難、足の関節部分の後遺障害によって、トイレや風呂などの改造費が認められるケースもあります。
細かいものですが、高次脳機能障害を負った主婦について、火災を防止するために、ガスコンロから、IHクッキングヒーターに取り替えた費用を損害として認めたようなケースもあります。
東京地裁平成11年7月29日判決
(交通事故民事裁判例集32巻4号1227頁)
1778万5193円
東京地裁平成16年12月21日判決
(交通事故民事裁判例集37巻6号1721頁)
1103万6340円
名古屋地裁平成17年5月17日判決
(交通事故民事裁判例集38巻3号694頁)
1024万9832円+将来の改造費243万5176円
名古屋地裁平成19年10月16日判決
(交通事故民事裁判例集40巻5号1338頁)
1065万7832