後遺障害を負ってしまったものの、事故後の収入は減っていない、そんなケースでも逸失利益を認めた裁判例です。
被害者は、症状固定時52歳の男性。麻酔科医師でした。
後遺障害は、脊柱変形で後遺障害等級11級7号の認定がされています。
事故後、休業期間を除けば、明らかな減収がなかった事案です。
事故後、後遺障害を負っていたとしても、相当の努力をすることで、収入を一時的に維持できるケースはあります。
しかし、将来にわたって、それが維持できるかは分かりません。
このような場合、後遺障害の影響を具体的に主張することで、減収がなくても逸失利益が認められる例は多いです。
今回の判決でも
「明らかな減収はないものの、原告の後遺障害は、脊柱の変形による腰痛等の神経症状であることから、麻酔医師としての労働能力に与える影響は否めず、現時点においては、原告の努力等によって、減収は生じていないとしても、将来的に不利益を被るおそれは否定できない」
として、症状固定から23年間にわたり労働能力を9パーセント喪失したとして、逸失利益を認定しています。