交通事故の損害賠償請求をする際、今回の事故以前にも交通事故の被害にあっている場合、保険会社から、今回の傷害は、過去の事故が影響しているから減額すべきだと主張されることがあります。
法的には、損害との因果関係の問題や、素因減額の問題として扱われます。
被害者としては、以前の事故と関係がないと考える場合、今回の事故当時には、以前の事故の怪我は完治していて、何の影響もなく生活できていたことを主張・立証していく必要があります。
東京地裁平成22年3月4日判決は、
過去に3度の事故に遭い、後遺障害の認定もされていた被害者の請求に対して、過去の事故から長期間が経過していること等から、過去の事故と今回の損害は関係がないとして、減額しないと判断しています。
「 上記昭和55年時の交通事故における原告の傷害の程度や後遺障害の内容は明らかではなく,また,当時から本件事故時まで20年以上が経過していることを勘案すると,昭和55年時の交通事故による障害や疾患が本件事故時に残存していたと認めるに足りない。また,平成4年時の交通事故についても, 後遺障害等級14級にとどまる後遺障害であるうえ,本件事故時までに10年以上が経過していることを勘案すると,やはり,本件事故時においてその症状が残 存していたと認めるに足りないというべきである。さらに平成12年時の交通事故についても,原告は,同事故による傷害について平成13年1月31日まで治 療を受けたことが認められるものの,その後は,医療機関で治療を受けた形跡は窺えず,前記最後の治療日から本件事故時まで約1年半が経過していることを考 えると,本件事故時にその症状なり影響が残存していたと認めるに足りない。
よって,本件事故時に,原告に,前記認定した傷害や後遺障害に寄与する身体的素因があったと認めることはできない。」